博多祇園山笠とは、福岡市博多区で毎年7月1日から15日にかけて行われる、疫病退散と商売繁盛を願う伝統的な祭りです。
この記事では、「博多祇園山笠」という名前の意味から始め、どんな祭りであるのか、その歴史と由来について詳しく解説します。
博多祇園山笠の名前の意味は?
博多祇園山笠は、山笠が「祇園さん」と呼ばれる櫛田神社の氏子の祭りであることがその由来です。
博多には「祇園」という地名がありますが、その由来は「櫛田神社」に祀られている素戔鳴尊(スサノオオノミコト=祇園宮)からきています。
祇園とは、祇園宮である素戔嗚命を指すのですね。
そういう意味からも、博多の擬音は歴史のある神聖な土地でもあります。
博多祇園山笠とはどんな祭り?
博多祇園山笠とは、福岡市博多区の夏の風物詩として知られる、毎年7月1日から15日まで櫛田神社で行われる壮大な伝統行事です。
この祭りは、疫病退散のため、承天寺の開祖・聖一国師によって始められたと伝えられています。
特に、最終日の早朝に行われる「追い山」と呼ばれる行事は、勇壮な舁き手たちが約5kmのコースを、重さ約1トンの飾り山笠を担ぎながら疾走する、迫力満点のハイライトです。
この祭りは、国の重要無形民俗文化財に指定されており、その歴史と伝統が高く評価されています。
また、2016年にはユネスコの無形文化遺産に登録され、世界的にもその価値が認められています。
博多祇園山笠の歴史と由来 なぜ始まった?
博多祇園山笠の起源は、1241年(仁治2年)、博多で流行った疫病を鎮めるため、承天寺の開祖・聖一国師が祈祷行列を行い、町民に担がれた木製の棚に乗り、水を撒きながら町を清めてまわったことに始まります。
この祈願行事が「山笠」の原型となり、現在に至るまで福岡市博多区の夏の大イベントとして発展しました。
山笠のハイライトである「追い山」は、貞享4年(1687年)に土居流が東長寺で昼食中に石堂流(現恵比須流)に追い越されたことが発端とされ、その後、速さを競う正式な行事として定着しました。
博多祇園山笠の特徴と魅力とは
博多祇園山笠の特徴と魅力は、その壮大な歴史と地域文化の深さにあります。
この祭りは、櫛田神社の総鎮守として知られる祇園祭の一環として、毎年7月1日から15日まで福岡市博多区で行われます。
博多祇園山笠において特に注目すべきは、約4.5メートルの高さを誇る「舁き山笠」と、その圧倒的な規模と美しさで知られる高さ約13メートルの「飾り山笠」です。
これらの山笠は、福岡市博多区を舞台に毎年7月1日から15日まで展開される祭典の中核をなす要素であり、その伝統と技術の粋を集めた作品として、多くの人々を魅了しています。
舁き山
「舁き山笠」は、石堂川(現在の御笠川)と那珂川の間、いわゆる博多部において、地元の氏子達によって熱心に担がれ、勇壮な追い山(追い山笠)を形成します。
飾り山
「飾り山笠」は、福岡市博多区の櫛田神社を中心に、博多部を中心に14箇所で飾り山が展示されます。7月1日から9日にかけては「静の期間」とされ、山笠の走行は行われません。この期間、豪華絢爛な飾り山を観賞しつつ、博多の街を散策することになります。
繁華街や商店街に設置された飾り山の周辺では、賑やかな露店が並び、祭りの雰囲気をどんどん高めていきます。
以下は、2023年の飾り山の設置場所です。
三番山笠 東流
場所:福岡市博多区上呉服町10-10(呉服町ビジネスセンター)
最寄り駅:地下鉄空港線「呉服町」
四番山笠 中洲流
場所:福岡市博多区中洲4(ホテルリソルトリニティ博多前)
最寄り駅:地下鉄空港線「中洲川端」
八番山笠 上川端通
場所:福岡市博多区上川端町(櫛田神社、キャナルシティ博多側)
最寄り駅:地下鉄七隈線「櫛田神社前」
九番山笠 天神一丁目
場所:福岡市中央区天神1-4-1(博多大丸 エルガーラ・パサージュ広場内)
最寄り駅:地下鉄七隈線「天神南」
十番山笠 渡辺通一丁目
場所:福岡市中央区渡辺通1-1(ホテルニューオータニ博多横、サンセルコ広場前)
最寄り駅:地下鉄七隈線「渡辺通」
十一番山笠 福岡ドーム
場所:福岡市中央区地行浜2-2-1(マークイズ福岡2Fももちステージ)
最寄り駅:地下鉄空港線「唐人町」
十二番山笠 博多駅商店連合会
場所:福岡市博多区博多駅中央街1-1(JR博多駅前広場)
最寄り駅:地下鉄空港線・七隈線「博多」
十三番山笠 キャナルシティ博多
場所:福岡市博多区住吉1-2(キャナルシティ博多B1F サンプラザステージ)
最寄り駅:地下鉄七隈線「櫛田神社前」
十四番山笠 川端中央街
場所:福岡市博多区上川端町12-18(地下鉄中洲川端駅側)
最寄り駅:地下鉄空港線「中洲川端」
十五番山笠 ソラリア
場所:福岡市中央区天神2-2-43(ソラリアプラザ)
最寄り駅:地下鉄空港線「天神」
十六番山笠 新天町
場所:福岡市中央区天神2-9(新天町商店街 アーケード内)
最寄り駅:地下鉄空港線「天神」
十七番山笠 博多リバレイン
場所:福岡市博多区下川端町3-1(博多リバレイン前
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れらは、博多織や西陣織といった日本が世界に誇る伝統工芸の技術を駆使して作られ、武者人形や歴史上の英雄をモチーフにした精巧な人形や装飾で覆われています。
特に、飾り山笠の中には、高さが13メートルにも及ぶものがあり、これは福岡市中心部の街並みにそびえ立つ、圧巻のビジュアルを提供します。
博多祇園山笠の期間中、これらの飾り山笠は、博多区の歴史と文化を象徴するアートワークとして、訪れる人々を魅了し続けています。
また、近年では2002年から、地元福岡の伝統的な織物である博多織を人形の衣装の生地に使用するなど、地域の伝統工芸品の魅力を再発見し、伝承する役割も果たしています。
これらの山笠は、博多織や西陣織などの伝統的な技法を駆使して作り上げられます。
国の重要無形民俗文化財にも指定されており、2016年には「山・鉾・屋台行事」としてユネスコの無形文化遺産に登録されたことで、その文化的価値が世界的に認められています。。
博多祇園山笠と女性のかかわり
長い間、博多祇園山笠は男性のみが祭りの主要な役割を担ってきました。これは、舁き手(山笠を担ぐ人々)が男性のみで構成され、女性は舁き手の詰め所に入ることができなかったり、直接山笠に触れることが禁じられていたりすることを意味します。
また、女性が山笠の制作や運営に関わることも制限されていました。
特に、山笠を建てる際の重要な役割や、祭りを盛り上げる掛け声を出す役割も、男性によって行われてきました。
祭りの伝統的な規則の中で、「女人禁制」という概念があり、これは女性が特定の聖なる場所や行事に参加することを制限するものでした。
博多祇園山笠においても、女性は山笠の舁き手として参加することはできず、祭りの主要な部分からは距離を置かれていました。
しかし、2016年にこの祭りがユネスコの無形文化遺産に登録された後、女性の関与も徐々に拡大しています。
特に注目すべき変化は、女性人形師が山笠人形を制作するようになったことです。
2016年、博多祇園山笠において、女性人形師によって制作された「真田十勇士」や「長政関ヶ原之勇」といったテーマの山笠人形が展示され、これは博多祇園山笠の長い歴史において画期的な出来事とされています。
博多祇園山笠の日程や行事の紹介
博多祇園山笠 日程スケジュールの紹介
。以下は、祭りの主な行事とその日程の概要です。
- 6月1日: 恵比須流による〆卸し。祭りの準備が始まります。
- 6月中: 小屋入りと舁山笠、飾山笠の準備。各流で行われ、祭りに向けての準備が本格化します。
- 6月30日: 櫛田神社での境内飾山笠の設置と御神入れ、櫛田神社夏越大払式の終了をもって、祭りが始まります。
- 7月1日: 全流での〆卸しと飾山笠の公開開始。当番町ではお汐井取りが行われます。
- 7月1日~8日: 各流で舁山笠の御神入れ。この期間、飾山笠が一般に公開されます。
- 7月9日: 各流によるお汐井取り。
- 7月10日: 献花献茶式と男野点茶会。本装束の浦安の舞が登場します。
- 7月11日: 朝早くに朝山が行われ、夕方には他流舁があり、中洲流、大黒流、東流が櫛田入りをします。
- 7月12日: 追山馴。追山笠の予行演習が行われます。
- 7月13日: 集団山見せ。名士や有名人を台上がりさせ、舁山笠が福岡市役所まで練り歩きます。
- 7月14日: 流舁。各流が区域内を練り歩きます。
- 7月15日: 追山笠と鎮めの能。博多祇園山笠のクライマックスであり、4時59分に一番山笠がスタートし、約5kmのコースを駆け抜けた後、櫛田神社で鎮めの能が奉納されます。
博多祇園山笠 コースとその魅力
追い山のコースは、福岡市博多区の櫛田神社をスタート地点とし、博多の歴史ある街並みを駆け抜ける約5kmのルートです。
コースは、櫛田神社から博多駅前広場、キャナルシティ博多を経由し、須崎町の廻り止めまで続きます。
櫛田神社から国体道路に入り、祇園町交差点を左折して大博通りへ。ここから東長寺前を経て、承天寺前でUターンし、再び大博通りに戻ります。その後、恵比須通りを通り、最終的に須崎町で追い山が終了します。
櫛田神社(スタート地点)
見どころ:祭りのスタートと終わりの地、博多の総鎮守。舁き手たちが力強く山笠を担ぎ出す瞬間や、追い山の後に行われる「鎮めの能」の奉納は圧巻。
国体道路
上:右の櫛田神社から出て、正面の国体道路を望む
見どころ:山笠が勇壮に走り抜ける姿を見ることができ、沿道の熱気も一際高まります。
祇園町交差点
見どころ:大博通りへ向かうターニングポイント。迫力満点の山笠が曲がる様子は見物。
大博通り
見どころ:博多のメインストリートを山笠が疾走。商店街の中を通るため、祭りの雰囲気をより身近に感じられる。
東長寺前・承天寺前
見どころ:歴史ある寺院を背景に山笠が通過。古き良き博多の雰囲気と迫力ある山笠の融合が楽しめます。
恵比須通り
見どころ:狭い路地を山笠が駆け抜ける姿は迫力満点。地元の密接なコミュニティ感も感じられます。
須崎町(廻り止め)
見どころ:追い山のフィニッシュライン。長い道のりを走り抜けてきた舁き手たちの達成感と解放感が溢れる場所です。
各場所では、博多の街並みや歴史的建造物を背景に、山笠とその舁き手たちの壮絶な力と美を間近で見ることができ、博多祇園山笠の伝統と現代の博多が織りなす特別な風景を堪能することができます。
コース上では、舁き手が「オイッサ!オイッサ!」と掛け声を上げながら、飾り立てられた山笠を担ぎ、力強く走り抜ける姿を見ることができます。
沿道には地元住民や観光客が集まり、祭りの熱気であふれかえります。
博多の町を縦横無尽に走る舁き手たちの勇壮な姿は、すごい印象です。
博多駅やキャナルシティ博多などの現代的なランドマークを背景に繰り広げられる伝統行事は、古き良き博多の伝統と現代の融合を感じます。
博多祇園山笠 場所とアクセス
博多祇園山笠を櫛田神社で観るなら、博多駅からのアクセスはとても簡単です。
福岡市地下鉄空港線「祇園駅」が最も近く、駅から櫛田神社までは徒歩約5分です。
福岡の交通の要所であるJR博多駅からも、徒歩約15分という距離にあります。
西鉄バスを利用する場合は「博多祇園町(2)」で下車すると、櫛田神社まで徒歩5分ほどです。
このほか、天神からもアクセスしやすいです。
祭り期間中は特に、地下鉄やバスなど公共交通機関を利用するのがおすすめ。道路自体を駆け抜けるので、車を走らせたり駐車場を探したりするのはこんなんです。
博多祇園山笠 服装の伝統
博多祇園山笠における参加者の服装は、伝統と精神性を色濃く反映しています。特に、水法被と長法被はその最たるもので、祭りでの役割や時期によって使い分けられます。
水法被
水法被は、山笠を舁く(かく)際に舁き手が着用する正装です。
一般的には、流れや町によって異なる色や紋様が入り、その組織を象徴するデザインが施されています。
この水法被を着用することで、舁き手は一つの流れの一員としての誇りと連帯感を示し、また祭りへの参加意識を高めることができます
。水法被の下には、腹巻やさらしを巻くことで身体を守りつつ、博多祇園山笠特有の装束としての役割を果たします。
長法被
長法被は山舁き以外の山笠関連行事に参加する際に着用される衣服で、よりフォーマルな場や式典、または祭り期間中の公的な場面で見られます。
長法被は、一般的に久留米絣で作られ、地下足袋と共に着用されることが多いです。特に、山笠期間中はこの長法被で結婚式に出席することも許されている正装です。博多の文化の中で長法被は大切な文化として認められているのです。
これらの伝統的な服装は、博多祇園山笠の長い歴史と共に発展してきたものであり、祭りの精神性を今に伝える重要な要素です。
博多祇園山笠 桟敷席の選び方と楽しみ方
櫛田神社の境内周囲に作られる桟敷席は、博多祇園山笠の観覧において最も特別な場所であり、昭和32年(1957年)から設けられています。博多祇園山笠のクライマックスである櫛田入りを間近で見ることができる「アリーナ席」とも言える位置にあります。
昭和51年(1976年)に現在の鉄パイプ製の桟敷席へと変更され、昭和58年(1983年)からはプロゴルフ大会のギャラリー用スタンドを建設する専門業者によりスタンド式になりました。
桟敷席のチケットは、毎年6月26日に櫛田神社で販売され、これは「エリア入場券」であり指定席ではないため、良い席を確保するには当日早くからの並びが必要です。
販売されるのは「追い山ならし」(7月12日)と「追い山」(7月15日)の各300枚、合わせて600枚です。
席の種類には「あ」「い」「う」「え」「お」の5種類があり、一般に販売されるのはこれら5種類で、「か」「き」「く」は関係者席とされています。特に「あ」「い」席は、櫛田入りで山笠が直接入ってくる光景を見られるため、非常に人気があります。桟敷席販売日の前日から並んで待つ人も多く、販売当日の朝には「あ」席を購入する人へのメディアの注目が集まります。
「お」席は土居通りから櫛田神社清道に入ってくる舁き山のトップスピードと、清道を駆け抜ける様子を見られるため人気があります。
「う」席は席数が最も多く、見やすい高さに作られています。
「え」席は鳥居側に位置し、八番山の高さを最初に実感できる場所ですが、屋根があるため視界が狭まる可能性があります。
桟敷席内では雨の際の傘の使用や、カメラの一脚、三脚の使用が禁止されており、一時退出時には入出口で外出証をもらう必要があります。これらのルールと席の特性を理解することで、博多祇園山笠をより深く楽しむことができます。
まとめ
- 博多祇園山笠は櫛田神社の氏子の祭り
- 「祇園さん」と呼ばれる櫛田神社がその由来
- 博多に「祇園」という地名が存在
- 祇園宮である素戔嗚命を指す
- 疫病退散と博多の町の繁栄を願う行事
- 毎年7月1日から15日まで櫛田神社で行われる
- 「追い山」は祭りのハイライト
- 勇壮な舁き手たちが約5kmを疾走
- 国の重要無形民俗文化財に指定
- 2016年にユネスコ無形文化遺産に登録
- 起源は1241年、承天寺の聖一国師による祈祷行列
- 「追い山」は貞享4年に始まった速さを競う行事
- 特に注目されるのは「舁き山笠」と「飾り山笠」
- 高さ約13メートルの飾り山笠は豪華絢爛
- 飾り山笠は博多織や西陣織で作られる
- 長い間は男性のみの参加だったが、女性人形師も活躍開始
- 祭りは疫病退散と商売繁盛を願うために始められた